
JOURNAL
家具・空間・インテリアについて
インテリアデザインことはじめ
インテリアデザインというと、家具や照明、カーテン、色、装飾を選ぶ作業だと思われがちです。
もちろん、それらを選ぶこともインテリアデザインの一部です。けれど、本来のインテリアデザインは、完成した空間に最後に足すものではありません。空間の質は、もっと早い段階から決まり始めています。
ソファをどこに置くかは、窓の位置、動線、照明、コンセント、収納量、床材、壁の余白と結びついています。ダイニングテーブルの大きさは、家族の人数だけでなく、料理の仕方、来客の頻度、椅子を引くための余白、照明の高さ、周囲の収納とも関わっています。
インテリアは「後から整えるもの」ではありません。
空間の使い方そのものを、かたちにするものです。
家具を選ぶ前に、そこでどのように過ごすのかを考える。素材を決める前に、その空間がどのような時間を生むべきかを考える。照明を選ぶ前に、どこを明るくし、どこを暗く残すべきかを考える。
インテリアデザインの意味は、単に美しい家具や素材を選ぶことではありません。空間全体をどう使い、どこに何を置き、何を大切にするのかを整理し、統合していくことにあります。
インテリアコーディネートとの違い
インテリアに関する言葉には、いくつか似たものがあります。
たとえば、インテリアコーディネート。
インテリアコーディネートは、すでにある空間に対して、家具、照明、カーテン、ラグ、小物などを選び、雰囲気を整えることです。既存の空間を前提に、色や素材、家具の組み合わせを調整していく行為と言えます。
一方で、インテリアデザインは、空間の使い方、動線、素材、造作家具、照明、収納、設備、家具、アート、予算配分までを含めて、空間全体を設計することです。
どちらが優れているという話ではありません。担う役割が違います。
家具を数点買い足したい場合や、今ある空間の雰囲気を整えたい場合には、インテリアコーディネートが適していることもあります。けれど、間取り、内装、造作家具、照明、収納、家具・備品、工事、予算配分までを一体で考える必要がある場合には、インテリアデザインとして空間全体を設計する視点が必要になります。
建築とインテリアを分けて考えない
建築の設計では、構造、法規、動線、外観、全体計画といった大きな条件を整理する力が求められます。一方で、インテリアでは、素材の手触り、家具の寸法、光の当たり方、収納の使い勝手、座ったときの視線など、人の身体に近い距離での判断が重要になります。
どちらか一方だけで空間を考えると、ずれが生まれることがあります。
建築の骨格はよくても、家具や照明が後から置かれたように感じられる。反対に、家具や装飾は美しくても、空間全体の動線や寸法、設備との整合性が弱くなることもあります。
だからこそ重要なのは、建築とインテリアを別々に考えないことです。
壁の位置、天井の高さ、開口部、照明、家具、素材、収納、家具・備品を、一つの空間の要素として扱う。空間の大きな構成と、身体に近い小さな質感を分けずに考えることで、建築と内装、家具のあいだに断層のない空間を目指します。
小さな部品も、空間全体から判断する
たとえば、ドアノブ一つを選ぶ場合でも、本来は単体の見た目だけで決めるものではありません。
その空間は、静かで落ち着いた印象にしたいのか。少し緊張感のある空間にしたいのか。手に触れたときに、冷たく硬い印象がよいのか、やわらかく馴染む印象がよいのか。
壁や扉の素材、床の色、照明の明るさ、家具の脚の細さ、スイッチプレートやカーテンレールなど、他の金物とどう揃えるのか。
真鍮がよい場合もあれば、黒皮鉄のような表情が合う場合もあります。ステンレスのように清潔で控えめな印象が合う場合もあります。目立たせず、扉と同化させた方がよい場合もあれば、小さな金物を空間の中のアクセントとして扱うこともあります。
つまり、ドアノブを選ぶことは、ドアノブだけを選ぶことではありません。
完成する空間全体像から、その小さな部品がどうあるべきかを判断することです。
同じことは、椅子、テーブル、照明器具、スイッチプレート、カーテンレール、収納の取手、壁の艶、床材の幅にも言えます。
小さな要素ほど、単体で選ぶとばらばらになりやすい。けれど、空間全体の方向性が見えてくると、それぞれの選択に理由が生まれます。
家具は、空間の輪郭を整える
家具は、単に生活行為を支える道具ではありません。
収納、カウンター、ベンチ、デスク、洗面、キッチン周りなどは、空間に合わせて造作家具として設計することで、より自然に空間の一部として成立します。家具は、生活の動線を整え、視線の抜けをつくり、余白を生み、空間の輪郭を決める要素でもあります。
見た目や用途だけで家具を足すのではなく、家具によって空間の輪郭を整える。それが、家具のデザインや選定で到達すべき点です。
光を、空間の一部として考える
空間の印象は、素材や家具だけでなく、光によって大きく変わります。
どこを明るくし、どこを暗く残すか。天井を照らすのか、壁を照らすのか、テーブル面を照らすのか。器具を見せるのか、建築に隠すのか。
昼には自然光や外の風景が空間の中心になりますが、夜には照明の位置や明るさ、影の落ち方が空間の印象を決めます。素材の艶、壁の陰影、天井の高さ、家具の存在感は、光によって異なる表情を見せます。
照明器具を選ぶことは、単に明るさを確保することではありません。空間の中に、どのような時間と陰影をつくるかを考えることです。
事例:i villa / Karuizawa
i villa / Karuizawa では、大空間を成立させるために中央付近に立つ大きなコンクリートの構造柱を、隠すべき障害物としてではなく、居場所が生まれるきっかけとして扱いました。柱に寄り添うようにフロアソファを造作し、可動式のカーテンの引きしろも兼ねさせることで、構造、家具、空間の使い方を一つの判断として決めています。
また、リビング上部には大きさの異なる木天井を重ねて架け、その目地に真鍮を通しながら、天井そのものから間接光を落とす計画としました。同じ天井の中に空調の吹き出し・吸い込み口を隠し、器具そのものを見せずに、光と空気の両方を扱っています。これは、照明器具を選ぶ作業というより、天井という建築要素を光源として設計する判断です。
素材を、単体ではなく関係で選ぶ
インテリアデザインでは、素材選びも大切です。ただし、素材は単に高価であればよいわけでも、種類を増やせば豊かになるわけでもありません。反対に、素材の数を絞れば必ず上品になる、というわけでもありません。
重要なのは、素材同士の関係です。
色調、艶、目地の見え方、触れたときの質感、光の反射、経年変化、掃除のしやすさ、傷のつき方。素材は、見た目だけでなく、時間や使い方とともに評価されます。i villa / Karuizawa では、真鍮目地の木パネル、艶やコテあとを持つ左官、大判のタイルや石など、性格の異なる素材を一つの空間の中に共存させています。
素材の数を単純に絞るのではなく、色調、艶、質感のスケールを細かくそろえることで、多くの素材を使いながらも空間としての落ち着きを保っています。
予算配分も、デザインの一部
インテリアは、気を抜くと予算が散らばります。高い家具を買ったのに空間に合わない。照明を削りすぎて、夜の雰囲気が弱くなる。カーテンやラグを後回しにして、完成後に空間が締まらない。見えない収納や下地にお金をかけず、使い勝手が悪くなる。すべてを良くしたいと思っていても、現実には優先順位があり、制限もあります。
デザイナーに依頼する意味は、単に意匠性の高さを求めることだけではありません。限られた予算の中で、どこにお金をかけるべきかを整理することにもあります。空間の印象を決める場所に重点的に予算をかける。既製品で十分なものは無理に造作しない。長く触れる部分には質を確保する。見えないけれど使い勝手に関わる下地や収納には必要な予算を残す。
こうした配分を考えることも、インテリアデザインの重要な役割です。
私たちの考え方
私たちは、インテリアデザインを単なる装飾としてではなく、建築、家具、素材、光、アート、そして生活や事業のあり方をつなぐものとして考えています。大切にしているのは、派手に見せることではなく、空間の中にあるべき秩序と余白を見つけることです。
住宅であれば、日々の生活が自然に整うこと。
別荘であれば、滞在そのものが記憶に残ること。
ホテルや店舗であれば、空間がブランドや体験として機能すること。
家具や素材を選ぶ前に、その空間がどのような時間を生むべきかを考える。
そこから、必要なものを一つずつ選び、必要であれば新しく設計する。
空間の大きな骨格と、人の手に触れる小さな質感を分けずに扱うこと。
それが、私たちの考えるインテリアデザインです。
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